「偏差値の上がる食べ物」をあなたは信じる?「因果と相関」の違い。


はじめに:「偏差値の上がる食べ物」って信じる?

ある日、インターネットでこんな記事を見かけたとします。

「チョコレートをよく食べる学生は、模試の成績が高い傾向がある!」

あなたはこの情報をどう読み取るでしょうか?

「へぇ、じゃあ今日からチョコを毎日食べよう!」

「成績が高い子は集中力もあるから、甘いものが好きなのかも?」

「いや、これって本当にチョコのせいなのかな…?」

ここで問われているのが、「因果」と「相関」の違いを見抜く力です。これは単なる知識ではなく、【読解力】と【仮説推論】の力が試される場面でもあります。

受験ではもちろん、日々の勉強計画や志望校選び、社会全体の見方にまで関わるこのテーマ。この記事では、因果関係と相関関係の違いを、基礎から応用まで、わかりやすく解説していきます。

「相関関係」とは何か?

まずは相関から。

相関関係(correlation)

ある2つの事柄に「一緒に変化する傾向」があることを、相関関係といいます。

たとえば、

  • 身長が高い人ほど体重も重い
  • 模試で英語が得意な人は国語も得意である傾向がある

といった場合、これらは「相関がある」といえます。

相関には「プラス」と「マイナス」がある

  • 正の相関(プラスの相関):一方が上がると、もう一方も上がる(例:睡眠時間と集中力)
  • 負の相関(マイナスの相関):一方が上がると、もう一方は下がる(例:スマホ時間と成績)

ただし、ここで大切なのが…

「因果関係」とは何か?

因果関係(causality)

「Aが起こることでBが起こる」という原因と結果の関係があるとき、それは因果関係です。

たとえば:

  • 「勉強時間を増やしたから、成績が上がった」
  • 「風邪をひいたから、熱が出た」

このように、「AがBを引き起こしている」ことが確認できた場合、因果関係があると判断します。

相関 ≠ 因果:よくある誤解

ここで問題です。

「アイスクリームの売り上げが上がると、熱中症の患者数も増える」

この2つには「正の相関」があります。でも、これはアイスクリームが熱中症を引き起こすという意味でしょうか?

もちろん違います。

第三の変数に注意!

ここには「気温が高い」という共通の原因(交絡因子)があるのです。

  • 気温が高い ⇒ アイスを買う人が増える
  • 気温が高い ⇒ 熱中症のリスクが高まる

このように、共通の原因があるだけで、因果関係はないのに「相関がある」ように見える例は、実生活でも非常に多いのです(疑似相関)。

こうした構造を理解するには、【論点構造化】のスキルが必要です。複数の情報がどのようにつながっているのか、何が本当の原因なのかを整理する力が求められます。

「因果関係がある」とどうやって証明する?

じゃあ、どうすれば「これは因果関係だ!」と言えるのでしょうか?

科学の世界ではこう考える

  1. 時間的順序:AがBよりも先に起きているか?
  2. 因果のメカニズム:AがBに影響を与える仕組みが説明できるか?
  3. 他の要因を排除できるか?(実験や統計で交絡因子を制御)

受験勉強における応用

たとえば、ある生徒が「朝5時起きで勉強するようにしたら偏差値が5上がった」と言ったとしましょう。

それは本当に「早起きの効果」なのか?

  • たまたま勉強の内容が得意だっただけでは?
  • 周りに宣言したからモチベーションが高かったのでは?

ここで問われているのが、「本当の原因は何か?」という問いです。これは論述問題でも、面接でも、小論文でも、非常に重要な視点になります。

この「成功や失敗の原因をどこに求めるか」という考え方は、心理学ではアトリビューション理論(原因帰属理論)と呼ばれます。成績が上がった理由を「早起き」に帰属させるのか、「努力」や「運」に帰属させるのかによって、その後の行動も変わってくるのです。

「疑う力」が合格を手繰り寄せる

ここまでの内容を、もっと実践的に使う方法を考えてみましょう。

志望校選びの例

「この塾の合格実績がすごい!だからここに通えば合格できるはず!」

このときに思い出したい問い:

  • それは本当に塾のおかげ?
  • もともと成績の高い生徒が多いだけでは?
  • 他の要因(家庭の学習環境など)はどう?

単なる「相関」を「因果」と思い込んで判断すると、選択を間違える危険があるのです。

「グラフ」や「データ」にだまされるな

受験生でも、ニュースやSNSでグラフや統計を見ることは多いはず。

でも、そこで「相関関係しかない」ものを「因果関係がある」と思い込ませる表現が使われることも少なくありません。

たとえば:

  • 「ゲームを1日1時間以内にした生徒の平均点が最も高い」
  • 「○○を摂取していたグループは、認知力が○%アップ」

こうしたデータは一見「効果がある」と言っているようで、実は「関係がある」ことしか証明していないことがよくあります。

実践!過去問で因果と相関を見抜こう

小論文や国語の現代文では、「因果」と「相関」の違いを見抜けることが問われます。

以下はその練習問題です。

【演習問題】

以下の主張には、因果関係があるといえるか、それとも相関関係だけかを判断してください。

  1. 毎日英単語を50語ずつ覚えている生徒は、模試で英語の点数が高い。
  2. 志望校を早めに決めた生徒ほど、受験の成功率が高い。
  3. 夜遅くまでスマホを使っている生徒は、睡眠時間が短い。

【解説】

  1. 相関はあるが、単語暗記以外の勉強量が多い可能性もあるので、因果関係があるとは言い切れない。
  2. モチベーションや自己効力感が高い生徒が早めに志望校を決めやすいだけかもしれない=相関関係の可能性あり
  3. これは因果関係の可能性が高い(スマホ利用が睡眠時間に直接影響する因果メカニズムが説明できる)。

このような問題を解くには、文章全体の構造を理解し、著者の主張と根拠の関係を正確に読み取る読解力が不可欠です。

受験生活に活かす:失敗しても自分を責めすぎない

因果と相関の考え方は、受験生活での感情のコントロールにも役立ちます。

たとえば、模試の結果が悪かったとき、「自分はダメだ」「能力がない」と自分を責めてしまう人もいるでしょう。しかし、成績の低下には様々な要因が絡んでいるかもしれません。

  • 体調が悪かった
  • たまたま苦手な範囲が多く出た
  • 勉強法が合っていなかった

このように、結果の原因を冷静に分析することで、無駄に自分を傷つけることを避けられます。これが【セルフコンパッション(自分への思いやり)】の考え方です。失敗を一つの原因だけに帰属させず、多角的に見る姿勢が、長期的な成長につながるのです。

習慣化のカギ:イフゼンルールで行動を変える

因果関係を正しく理解したら、次は「どう行動につなげるか」です。

たとえば、「スマホ時間が長いと成績が下がる」という因果関係があるとわかったら、具体的にどう対策しますか?

ここで役立つのが【イフゼンルール(if-then planning)】です。

  • もし(if) 夜10時になったら、そのとき(then) スマホをリビングに置く
  • もし 勉強中にスマホを触りたくなったら、そのとき 5分間ストレッチをする

このように、「もし〇〇なら、〇〇する」という形で行動をあらかじめ決めておくことで、習慣化の成功率が大きく高まることが研究で示されています。因果関係を知るだけでなく、実際に行動を変えるための具体的な戦略を持つことが重要なのです。

合格をつかむ「見抜く力」

  • 相関関係とは「一緒に変化する傾向」
  • 因果関係とは「AがBを引き起こす」関係
  • 因果と相関を混同すると、思考のミスが起こる
  • データやグラフを見るときには「第三の変数」に注意
  • 思考力・論述力を鍛えるには、「本当の原因」を見極める訓練が必要
  • 論点構造化で情報の関係性を整理し、仮説推論で複数の可能性を検討する
  • アトリビューション理論を理解し、成功や失敗の原因を適切に分析する
  • セルフコンパッションで自分を労わりながら前に進む
  • イフゼンルールで具体的な行動計画を立てる

まとめ:「学ぶ」って、問い続けること

受験勉強とは、単に知識を詰め込むだけでなく、「物事をどう見るか」という思考の姿勢を磨く旅でもあります。

「本当にそれが原因なのか?」
「この数字や現象の裏に、どんな構造があるのか?」

そうした問いを持ち続けることが、大学以降の学びでも、社会に出てからの判断力でも、あなたの力になります。

そして何より、「真実を見抜く力」は、人生を賢く生きるための最大の武器になります。

さあ、今日からあなたの勉強にも、この「因果と相関」の視点を取り入れてみましょう。