読解とは? 歴史に学ぶ「読むこと」の正体。AI時代に必要な“本当に使える読解力”


はじめに:なぜ文章は「読んでいるのに分からない」状態になるのか

「何度読んでも内容が入ってこない」
「問題文を読んでいるのに、何を聞かれているのか分からない」

多くの受験生が経験するこの現象は、集中力の問題ではありません。
読解とは、外から見えないところで複雑な認知の処理が進んでいる“高度な作業”だからです。

文字を追うだけでは足りず、
文脈をつかみ、意味をつなぎ合わせ、
書かれていない部分を補い、状況をイメージする。

このどこかが止まると、文章は急に“霧がかかったように”理解しにくくなります。

では、そもそも「読む」とは何をしているのでしょうか?


読解とは何か──科学が明らかにした「読む」という行為

読解を一文で説明すると次のようになります。

読解とは、文字から意味をつくり出し、文章の意図や文脈と結びつけて理解する認知プロセスである。

読解とは「情報を受け取る」行為ではなく、
読者が意味を“つくり出していく”行為です。

読みながら、頭の中で構造を組み立て、
必要に応じて知識を呼び出し、
目に見えない部分を補い、
全体を“ひとまとまりの理解”へ変えていきます。

この見方は、心理学と認知科学が長年にわたって積み重ねてきた研究に基づいています。


デコード理論(Gough & Tunmer, 1986)

「読む」という行為は、まずごく基礎的な処理として、文字を正しく認識し、それを音や語彙の意味に変換することから始まります。
これをデコードと呼び、読解の入り口となる最も基本的な力です。

たとえば、知らない漢字が多い文章では内容が頭に入ってこないように、
語彙や文法の処理に負荷がかかると、脳のリソースがそこに奪われ、
内容理解に使うはずの“考える余裕”が失われます。

つまり、デコードが安定しているほど、読解の後半に必要な推論やイメージ化に、
脳のエネルギーをしっかり回せるようになります。
読解は「文字処理の自動化」から始まることがデコード理論の本質です。


スキーマ理論(Rumelhart, 1980)

文章を理解するうえで欠かせないのが、読者自身のもつ知識の枠組み(スキーマ)です。
スキーマとは「世界の理解の仕方」を形づくる頭の中のテンプレートのようなもの。

たとえば、
「江戸時代の話」を読むとき、私たちは無意識に

  • 将軍
  • 武士と庶民の身分制度
  • 閉鎖的な鎖国政策
  • 商人文化

といった、自分の知識を呼び出しながら読み進めます。

同じ文章でも、読者によって理解に差が出るのは、このスキーマの違いが理由です。
スキーマが豊富な人ほど、文章の意味をすばやく補い、深く読み取ることができます。

スキーマ理論が示すのは、
読解は「知識なしには成立しない」
という極めて重要な事実です。


メンタルモデル理論(Johnson-Laird, 1983)

読解における“理解した感覚”の正体は、頭の中に状況を立体的にイメージできることにあります。
これをメンタルモデルと言います。

人は文章を読むと、そこに書かれた因果関係・空間・人物関係・流れを
頭の中で“モデル化”して理解します。

たとえば理科の文章なら、

  • Aという条件がある
    → だからBという現象が起こる
    → 結果としてCになる

という因果の流れを、脳内で「図のように」再構成しています。

数学文章題で図を描ける人ほど正答率が高いのは、
メンタルモデルが的確にできているからです。

この理論が示すのは、
文章を“映像として思い描けるか”が理解の深さを決めるということです。
逆にイメージが架からない文章は、理解も定着も難しくなります。


読解をつくる5つのプロセス

ここからは、文章を読むときに人の頭の中で動いている仕組みを、分かりやすく整理します。


デコード(文字→意味)

語彙や文法を正確に処理する段階。
ここが不安定だと、読むたびに脳の負担が大きくなり、内容理解まで到達しません。


文レベルの理解(ミクロ構造)

主語・述語・修飾語の関係を正しくつかむ力。
「文章が何を言っているのか」がここで決まります。


段落レベルの理解(マクロ構造)

段落には必ず役割があります。

  • 主張
  • 理由
  • 反論
  • 結論

段落の役割が分かると、文章全体の流れが一気に見えやすくなります。


推論

文章を読むときに大切なのは、まず 書いてある内容を正確に受け取ることです。
文と文のつながり、段落の役割、因果や対比など、文章の骨組みをしっかりつかむ力がここにあたります。

その基盤の上で、読解をより深い理解へ導くのが 推論 です。

推論とは、書かれている内容を手がかりに、
行間を補い、因果をつなげ、背景を理解する力のこと。

たとえば国語の文章で、
「彼は窓の外を見つめた。」
と書かれているだけでも、

  • 不安なのか
  • 決意しているのか
  • 現実から逃げたいのか

読者は“書かれていない部分”を状況や前後の文脈から補って理解します。

推論は決して特殊な能力ではなく、
私たちが普段の会話でも当たり前のように使っている理解の仕組みです。


メンタルモデル(状況イメージ)

文章をひとつのイメージとして頭の中に思い描く段階。
問題文が「映像として浮かぶかどうか」の差はここです。


読解が苦手な人の多くがつまずいているのは、語彙ではなく「推論」と「イメージ化」です。


読解力を伸ばす方法──今日からできる6つのトレーニング

読解力は“才能”ではなく、鍛えられるスキルです。
ここからは、科学的に効果がある方法を紹介します。


段落の役割を読む「構造読み」

文章を読むとき、その段落が

  • 何を主張しているのか
  • その理由を述べているのか
  • 例を挙げているのか
  • 話を転換しているのか

を意識するだけで、理解の精度が跳ね上がります。


指示語を正確に追う

「これ」「それ」「そのような」
指示語が指す対象を正確に特定できると、文章の論理が一気に整理されます。


因果関係を抜き出す

文章は基本的に「理由→結果」の構造で書かれています。
読んだら必ず「なぜ?」と「その結果どうなった?」を探す癖をつけると、読解の骨格が見えてきます。


メンタルモデルを描く(図示する)

理解が曖昧なときは、文章の内容を図にするのが最も効果的です。

  • 数学 → 図形化
  • 理科 → 流れを矢印で書く
  • 社会 → 地理や年表とつなぐ
  • 国語 → 人物相関図

イメージが固定されると、理解と記憶が同時に安定します。


要約で“意味の骨組み”を抽出する

文章を読み終えたら
「主張」「理由」「根拠」「結論」
の4つを短くまとめる。

これは文章構造をつかむ最も効率的な訓練で、COMNAVI式の学習設計でも重視されています。


AIで文章の構造を可視化する

AIに文章を要約させるのではなく、
構造を説明させる使い方が現代の読解トレーニングに最適です。

例えば、

  • この段落の役割は?
  • 因果関係を抽出して
  • 指示語の指す対象を特定して
  • 全体の流れをマップ化して

といった質問を投げると、文章の“見えにくい骨組み”が鮮明になります。


読解にまつわる誤解を解く


誤解1:語彙力があれば読解できる?

部分的には正しいですが、語彙はあくまで「入口」です。
本質は推論とイメージ化にあります。


誤解2:国語が苦手=センスがない?

読解はセンスではなく、構造処理のスキルです。
正しい方法で鍛えれば必ず伸びます。


誤解3:AIがあるから読解力は不要?

AIは文章の構造を高速に整理できますが、
「その情報をどう使うか」を判断するのは人間です。

人間の読解は“深さ”に強く、
AIの読解は“速さと網羅性”に強い。
この組み合わせが最適です。


AI時代の読解力─これから必要になる力とは

AIが文章の要約や分析を簡単にできる時代。
それでも人間の読解力が必要な理由は明確です。

文章の意味を自分の中で整理し、状況に合わせて判断・活用できるのは人間だけだから。

つまり、これからの読解力は

  • 文章を正確に理解する力
  • 重要な情報を選び抜く力
  • 自分の判断に結びつける力

の三つに統合されていきます。

AIに処理を任せつつ、
人間は“どの情報をどう活かすか”に集中する。
これがAI時代の読解力のあり方です。

今日紹介した方法

  • 段落の役割を読む
  • 因果をつかむ
  • AIに構造化させる

は、その基礎をつくる最も強力なトレーニングになります。

まとめ:読解の核心は「つなげて理解する力」

ここまで見てきたように、読解とは単に文字を追うだけの作業ではありません。
文字・文・段落・推論・イメージといった複数の処理が積み重なり、それらが“ひとつの意味”として立ち上がったときに初めて「理解した」と言えます。

読解の中心にあるのは “つなげて理解する力” です。

  • 文と文のつながり
  • 段落と段落のつながり
  • 書かれていることと書かれていないことのつながり
  • 読んだ内容と自分の知識のつながり
  • 情報と判断のつながり

これらがスムーズにつながるほど、文章ははっきり見えるようになります。

読解力は、語彙や国語の才能では決まりません。
構造を読み取り、因果をつかみ、必要に応じてイメージを描き、そして“意味をつくっていく”力です。

AIが文章の処理を助けてくれる時代だからこそ、人間は 「何を読み取り、どう活かすか」 に集中できます。
そのための基礎となるのが、今日紹介した読解のプロセスとトレーニングです。

難しい文章でも、一段落ずつ役割を意識する。
因果を拾う。
イメージ化する。
AIに構造を可視化させる。

こうした小さな習慣が、確実に読解力を底上げしてくれます。
明日からの勉強にも、仕事にも、必ず役立つはずです。

ここまで、読解について解説してきました。私たちCOMPASSは、皆さんが持つ読解の力を引き出せる環境をつくるためのお手伝いをコーチングを通してご提供しています。

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