読解力を5つのステップで分解する── なぜ「分かったつもり」で止まってしまうのか
目次
はじめに:読解が苦手な人は、どこで止まっているのか分からない
「文章を最後まで読んだのに、何が書いてあったか説明できない」
「答えを見れば納得するのに、自分では解けなかった」
こうした経験は、多くの学習者に共通しています。
しかしこの状態は、読解力が“低い”から起きているわけではありません。
問題は、読解という行為がひとつの才能だと思われていることにあります。
実際の読解は、複数の認知処理が段階的につながるプロセスです。
そのどこか一段階で止まれば、理解はそこで止まります。
本記事では、読解力を
語彙・構文・推論・統合・評価
という5つのステップに分解し、
- それぞれで何が起きているのか
- なぜつまずくのか
- どうすれば立て直せるのか
を因果的に解説します。
読解力とは何か──「一気に理解できない」のが普通である
まず前提として、読解を一文で整理します。
読解力とは、文章を語彙・構文・文脈・意味として段階的に処理し、最終的に自分の判断へと統合する認知プロセスです。
重要なのは、
読解は「一瞬で分かるもの」ではない、という点です。
人は、
- 文字を処理し
- 文の構造を捉え
- 書かれていない意味を補い
- 全体像をまとめ
- それを評価・判断する
という工程を、無意識に踏んでいます。
次章では、この流れを5つのステップとして整理します。
読解を構成する5つのステップ
ステップ① 語彙──意味処理の入口
語彙とは、単語や表現の意味を正確に理解する力です。
ここで起きているのは、文字→意味への変換です。
知らない語が多い文章では、
- 語彙処理に時間がかかる
- ワーキングメモリが消費される
- 後続の処理に回す余力がなくなる
という現象が起きます。
つまり、語彙で詰まると、その後のすべてが不利になります。
ステップ② 構文──「何を言っている文か」をつかむ
構文とは、主語・述語・修飾語の関係を把握する力です。
ここで文の骨格が決まります。
構文理解が弱いと、
- 誰が何をしたのか分からない
- 重要部分と補足部分の区別がつかない
という状態になります。
これは「国語が苦手」というより、
構造処理が不安定な状態です。
ステップ③ 推論──書かれていない意味を補う
推論とは、書かれている情報を手がかりに、書かれていない意味を補う力です。
これは、
- 因果関係をつなぐ
- 背景や意図を読み取る
- 行間を理解する
といった処理を含みます。
推論が弱いと、
文章は「事実の羅列」にしか見えません。
ただし、ここでいう推論とは書かれてないことを勝手に想像するということではありません。
基本的に文章を読む際には、書かれていることをそのまま読むことが重要です。
現代文の問題に限って言えば、書かれていないことは基本的に出てきません。
もし出てくる場合には、その問題は悪問と呼ばれるでしょう。
あくまで、
- 雨の描写から、悲しさの表現を読み取ること
- ここから先の文章の展開を予測することで、読む負担を減らすこと
などのための推論が重要となります。
ステップ④ 統合──全体を一つの意味にまとめる
統合とは、
- 文と文
- 段落と段落
- 主張と根拠
をつなぎ、文章全体をひとまとまりの理解としてまとめる段階です。
ここで初めて、
「つまり何が言いたい文章なのか」
が見えてきます。
多くの「分かったつもり」は、
この統合が不十分なまま起きています。
ステップ⑤ 評価──理解を判断や行動に結びつける
評価とは、
- この主張は妥当か
- どこが重要か
- 自分はどう考えるか
を判断する力です。
テストで言えば、
- 問われているポイントを見抜く
- 選択肢を比較する
といった力がここにあたります。
評価まで到達して、初めて「使える理解」になります。
もちろん、初めて問題に取り組んだときにここまでする必要はありません。
復習の際にここまで深く理解ができると、他の問題への応用力となるのです。
なぜ読解力は伸びないのか──5ステップのどこで止まるか
読解力が伸びない原因は、
能力不足ではなく 工程の詰まりです。
- 語彙で止まっているのか
- 構文が曖昧なのか
- 推論ができていないのか
- 統合できていないのか
- 評価まで届いていないのか
これを自覚できないと、
努力は的外れになります。
ここで重要になるのが、自分の読解プロセスを客観視する力(メタ認知)なのです。
特に読解力を鍛える上で重要な
を高めたい人は「なぜ読解力が伸びないのか? 認知負荷・メタ認知との関係を解説」もあわせてご確認ください。
5ステップを意識した読解トレーニング
ステップ別チェックを入れる
読む途中で、次の問いを入れます。
- 語彙:意味が曖昧な語はないか
- 構文:この文は何を言っているか
- 推論:なぜそうなるのか
- 統合:全体の主張は何か
- 評価:どこが問われそうか
これだけで、理解の精度は大きく変わります。
AIで「今どのステップか」を可視化する
AIには要約ではなく、こう聞きます。
- この文章の主張と根拠は?
- 因果関係を整理して
- 段落の役割を教えて
AIを使う目的は、答えを知ることではなく、理解の工程を確認することです。
COMNAVI式では、
AIを「認知プロセスの鏡」として使います。
まとめ:読解力は工程を理解すれば伸ばせる
読解力は、語彙・構文・推論・統合・評価
という5つのステップから成るプロセスです。
どこかで止まれば、理解もそこで止まります。
しかし、工程が分かれば、補い方も分かります。
読解力は才能ではありません。
工程を意識し、調整できる力です。

