2000語の英語単語帳を6時間で1周する暗記戦略。


はじめに:1周で覚えられないのは普通である

私たちは英単語帳を1周で覚えるかのように使います。
学校の単語テストも、一度やったテストの範囲は覚えている前提で進んでいきます。

しかし、英単語はそんな簡単に覚えられません。

・1回見ただけで定着する
・2〜3周でほぼ完璧になる

こうした話は非現実的です。限られた超人にしか不可能でしょう。
それでも、こちらを前提にしているのが現状。
多くの受験生は途中で壊れます。

覚えられない自分を見て、
「やっぱり才能がないのでは」と思ってしまう。

しかし、これは誤解です。

人間の記憶は、

  • すぐ忘れる
  • 何度も失敗しながら、少しずつ安定する
  • 完璧より「再会回数」に強く依存する

という性質を持っています。

そのため単語学習は、
「何周で覚えるか」ではなく
「何周でも回れる設計になっているか」

がすべてです。

この記事では、

  • 1周目は6時間で終わらせるべきという提案
  • 2周目以降の具体的な進め方や基準

を整理します。


前提整理:7周する前提で設計する

まず、大前提を共有します。

2000語を1〜2周で覚え切る、は想定しません。
それは無理です。

むしろこう考えます。

  • 1〜2周:ほぼ覚えていなくてOK
  • 3〜4周:少しずつ反応が出始める
  • 5〜7周:ようやく覚えているものが増えてくる

これは能力差ではなく、記憶のメカニズム故です。

そのため今回は、
「7周してようやく戦える」
ことを前提に設計します。

あくまでも7周というのは、経験上の目安です。
人によって異なるものではあるので、参考程度としてくださると幸いです。


全体像:7周の役割分担

まずは全体マップです。

周回役割その周で求めないこと
1周目顔合わせ・完走記憶定着
2周目再会・既視感づくり正確さ
3周目反応のトリガーを作るスピード
4周目反応を安定させる全単語の理解
5周目弱点の可視化万遍なさ
6周目反射化丁寧な思考
7周目圧縮完璧主義

重要なのは、各周で「やらないこと」が明確な点です。


1周目:顔合わせと完走(覚えなくていい)

目的:単語帳を“未知の塊”で無くす

  • 1語あたり:8〜12秒
  • 作業内容
    • 英語を見る
    • 日本語を確認
    • 発音を聞く or 出す
  • 到達水準
    • 「見たことがある」と言える
    • なんとなくの雰囲気が残る

ここで覚えられなくてOKです。
むしろ覚えようとすると破綻します。

1周目の役割は、地図作り。

「どんな単語が、この世界に存在するのか」を
脳に一度見せるだけです。

この作業で1語10秒で終わらせるとした場合、2000語くらいの単語帳であれば6時間で終わります。

何時間も丁寧に時間をかけたのに全然覚えていない状態をつくるなら、
この6時間の投資の方が圧倒的に効率が良い人が多いでしょう。


2周目:再会と既視感(まだ覚えなくていい)

目的:脳に“重要そう”と思わせ始める

  • 1語あたり:5〜10秒
  • 作業内容
    • 英語を見る
    • 意味を隠して一瞬考える
    • 無理なら即答えを見る

この周も、正解率は低くて問題ありません。

むしろここで大事なのは、

  • 「あ、これ見たことある」
  • 「さっきも出てきた気がする」

という既視感です。

記憶定着の鍵を握るのは、正解した回数ではなく思い出した回数です。


3周目:反応の芽を作る(思い出せなくて当然)

目的:英語→意味の“反射”を少し作る

  • 1語あたり:5〜8秒
  • 作業内容
    • 英語→意味を即答しようとする
    • 出なければすぐ確認

このあたりから、

  • 一瞬で出る単語
  • 毎回つまずく単語

が分かれ始めます。

ここで重要なのは、
つまずくことを失敗扱いしないこと。

むしろ、

つまずきが見える=学習が前に進んでいる証拠

です。


4周目:反応の安定化(全部分からなくていい)

目的:よく出る反応だけを安定させる

  • 覚えやすい単語 → 軽く流す
  • 毎回止まる単語 → 少しだけ丁寧に見る

ここで初めて、

  • 品詞
  • コアイメージ
  • よく出る意味

を意識します。

ただし、全単語ではやらない

この周のテーマは、

「全部分かる」ではなく
「止まりにくくする」

です。


5周目:弱点の可視化(覚えられない単語を受け入れる)

目的:覚えられない単語を特定する

この周でやることはシンプルです。

  • 何度やっても怪しい単語に印を付ける
  • 「自分はこれが弱い」と把握する

ここで重要なのは、

覚えられない単語が残るのは異常ではない
という前提です。

むしろ、

  • 全部薄く分かっている状態
    より
  • 強い語彙+弱点が見えている状態

の方が、受験では戦えます。


6周目:反射化フェーズ(考えずに出る単語を増やす)

目的:わかる単語を「思考対象」から外す

5周目までで、

  • 見た瞬間に分かる単語
  • 毎回少し止まる単語
  • 明確に弱い単語

が、かなりはっきりしてきているはずです。

6周目でやることは、これだけです。

考えずに出る単語を、意図的に増やす

やり方(6周目)

  • 単語を見る
  • 1秒以内に意味が出るかで判定する
  • 出たら即スキップ
  • 一瞬でも止まったら残す

この周では、

  • 丁寧に考えない
  • 思い出そうと粘らない
  • 「惜しい」は不合格

がルールです。

6周目は、思い出す速さそのものが目的です。

到達水準(6周目)

  • 多くの単語が、見た瞬間に反応する
  • 「考える単語」が目に見えて減る
  • 単語帳がかなり薄く感じ始める

このあたりで初めて、
“わかる単語がどんどん増えてくる感覚”
が生まれる人も多いでしょう。


7周目:未反射単語の圧縮(わからないを0に近づける)

目的:止まる単語を、限界まで減らす

ここまで来ると、ほとんどの単語がわかっている状態になります。

  • 反射で出る単語 → 見ない
  • 少し止まる単語 → 集中対象
  • 毎回怪しい単語 → 最優先

という形で強弱をつけるのもやりやすくなります。

やり方(7周目)

ここで、ほんの少しだけ丁寧さを戻すのも良いでしょう。

  • コアイメージを再確認する
  • よく出る意味を1つに固定する
  • 余計な意味・例外は切り捨てる

やることは少ないですが、
対象が絞るのがポイントです。

この周でも、目標は変わりません。

「覚え切る」ではなく
「止まらなくする」

到達水準(7周目)

  • 単語帳を見て、止まる単語がほぼ無い
  • 止まっても、すぐ思い出せる
  • 「これ以上は減らない」という納得感がある

「わからない単語が0に近い状態」とは、
完全暗記ではありません。

出てきたときに、処理が止まらない状態

それがゴールです。
たまに忘れてしまうのは人間の仕組み上しょうがない部分はあります。

一定回数正解した単語から除外していく(苦手だけを抽出する)

ここまで単語帳を回してくると、こう感じる瞬間が出てきます。

「これ、もう毎回見なくてよくないか?」
「分かってる単語で、時間食われてないか?」

この感覚、かなり大事です。

単語学習がしんどくなる原因の多くは、
もう分かっている単語を、いつまでも同じ重さで扱ってしまうことにあります。

そこで入れたいのが、次のルールです。

一定回数正解した単語は、暗記したものとして除外する。

例えば、5回などがおすすめの回数となります。

ここでいう5回は、

・連続じゃなくていい
・周回がまたがっていてもいい
・日が空いていてもいい

とにかく、「見た瞬間に意味が出た」が5回あったらOKです。

このルールを入れると、何が起きるか。

単語帳が、勝手に短くなっていきます。

・分かる単語は自然に消えていく
・怪しい単語だけが残る
・周回が速くなる
・苦手に触れる回数が増える

という形で、苦手が詰まったオリジナルの単語帳になります。

逆に、この仕組みがないと、

・分かる単語で安心する
・苦手は毎回ちょっとだけ触って終わる
・「やった感」はあるのに、伸びない

という状態に陥りやすい。

7回正解で除外する、というのは、
決してサボるためのルールではありません。

本当に必要な単語に、
ちゃんと時間を使うためのルールです。


一定回数正解した単語の復習(切るのではなく、扱いを変える)

「除外したら、忘れませんか?」

たぶん、ほとんどの人がここで不安になります。
でも、ここで言っている除外は、こういう意味ではありません。

「二度と見ない」ではありません。
「毎回、重く扱わない」というだけです。

何回も正解している単語は、
もう記憶としてはかなり安定しています。

だから、付き合い方を変えます。

・毎周回では見ない
・まとめて、短時間で確認する
・怪しくなったら、すぐ戻す

これだけです。

具体的には、

・2〜3か月に1回
・1語1〜2秒で流す
・考え込まない

この復習は、勉強というより点検です。

「はい、まだ覚えてますね」
「大丈夫そうですね」

それくらいの距離感で十分。

もしここで、

・一瞬止まる
・意味があやふやになる

そう感じたら、その単語だけしっかり確認すれば良いです。
それだけで、英単語の学習にメリハリをつけることができます。

この「戻せる」前提がある限り、
除外は危険でも、雑でもありません。

むしろ、

・メインの単語帳はどんどん軽くなり
・苦手だけに集中できて
・全体としては、忘れにくくなる

という、ちゃんとした好循環が回り始めます。


まとめ:単語帳は「何周で覚えるか」ではない

英単語学習は、

  • 何時間やったか
  • 何周で覚えたか

で決まりません。

「各周で、何を目的にしていたか」
で決まります。

  • 1〜2周目は覚えなくていい
  • 3〜4周目で反応を作り
  • 5周目で弱点を見つけ
  • 6周目で反射を増やし
  • 7周目で残りを圧縮する

まずは覚えられない前提でいい。
止まらなくなるところまで回せばいい。

今日から意識する行動は1つだけです。

今やっている周回で「何を求めていないか」を決めてから、単語帳を開く。