アップルやトヨタに学ぶ、勉強効率を飛躍させる管理術

アップルやトヨタといえば、世界を代表する企業です。その成功の背景には、売れる商品を作ったことに加えて、独自の効率的な管理手法があります。特に、トヨタ生産方式(TPS)に代表される 「ジャストインタイム」 と 「自働化」 は、限られたリソースを最大限に活用するための重要な考え方です。
これらの管理手法は、単なる製造業の話ではありません。実は、勉強に応用することで、学習効率を大きく向上させることができます。本記事では、アップルやトヨタが重視する管理の考え方を、勉強管理に落とし込む方法を紹介します。
目次
アップルやトヨタが重視する管理の二本柱
ジャストインタイム(Just In Time, JIT)
ジャストインタイムとは、「必要なものを、必要な時に、必要なだけ」 供給する管理手法です。無駄を省き、生産効率を最大化するための考え方であり、トヨタ生産方式の基本となっています。
普段の学習においては、5教科の勉強を同時並行的に進めることが多いでしょう。しかし、そういった勉強法では
- 本人のキャパを超えた勉強による「ムリ」
- 勉強できるのに勉強をしない「ムダ」
- 勉強量が日によってまちまちになることによる「ムラ」
の「ムリ・ムラ・ムダ」が発生してしまいます。
勉強の生産性を上げるためには、①理解能力を上げる②勉強量を増やす③学習の平均速度を上げるのうちどこかに打ち手を施す必要があります。
「ムリ・ムダ・ムラ」が発生していると、③学習の平均速度が下がってしまいます。
もちろん、気合いで②勉強時間を稼ぐことは重要なのですが、既に勉強ができている学生は、勉強時間が多い傾向が強い上に①理解能力も高いので、③を学習の平均速度を上げることが、合格確率を高めるために重要な要素であるといえます。
自働化(Jidoka)
「自働化」とは、単なるオートメーション(自動化)ではなく、異常が発生した際に自動的に停止し、問題を検知する仕組み を指します。ミスを未然に防ぎ、品質を維持する考え方です。
勉強において問題なのは、「学習における致命的なミスに気付かない状態で勉強を継続していること」です。
たとえば、工場において車を製造する際に、特定の機械が気づかないレベルで品質に致命的な影響を与える故障をしたとしましょう。
この故障に気づかず生産を続けてしまうと、不良品が生産され続けてしまいます。
この場合、故障に気づくまでに投資した時間やお金は無駄になってしまいますし、莫大な不良品の回収費用も発生してしまいます。
私たちには縁の遠い話と思えてしまうかもしれません。しかし、本来であれば義務教育の6年と高校3年の勉強時間があれば誰でも難関大学に合格できるところから考えると、具体的な勉強法や考え方になにかしらの見えない問題が発生している可能性が高いです。
この二本柱を活かして効率化をすることが、あくまで1つの勉強法の考えですが、工学的に考えてもかなり生産性の高い学習方法となります。
ジャストインタイムを活用した勉強管理術
必要が無い勉強は行わない「ニーズありきの思考」
勉強の効率を上げるには、「とりあえず全部やる」ではなく、「本当に必要な勉強だけをやる」ことが大切です。
目標達成に繋がらない勉強は、極端なことを言えば、すべて無駄な時間になってしまうといえるかもしれません。
具体的な実践方法
- ゴールを明確にする:試験範囲や学習目的を整理し、何が必要かを見極める
- 優先度をつける:「得点に直結するか?」「基礎が抜けていないか?」を基準に取捨選択
- 闇雲に問題を解かない:苦手な部分を重点的に学ぶ
例えば、英単語を5000個うろ覚えするよりも、頻出単語1000個を完璧にする方が効率的です。必要な勉強だけに集中し、無駄をなくすことで、学習効果を最大化できます。
復習をなによりも大事にする「後工程引取方式」
トヨタの生産方式では、後工程(完成品の製造)が前工程(部品の供給)に指示を出し、必要な分だけ生産させる「後工程引取方式」が採用されています。これを勉強に置き換えると、「必要な復習を適切なタイミングで行う」という管理術になります。
どうしても勉強が進んでいくと、復習を後回しにして新しい勉強を優先したくなります。しかし、新しい勉強を優先してしまうと復習の時間が減り、長期記憶の定着や本人のキャパに対して、問題が発生してしまいます。
エビングハウスという学者の研究によると、長期的な記憶の定着においては、定期的な復習を行うことが重要であるとされています。
また、膨大な復習と新たな学習を並行しすぎることで、本人のキャパシティを超えて、集中力が下がった効率性の低い勉強をする羽目になってしまいます。
具体的な実践方法
- 復習を最優先に行う:新しい参考書に進みたくなる気持ちをぐっと抑えて、まずは復習を優先的に行う
- 復習のタイミングを管理する:エビングハウスの忘却曲線を参考に、1日後・1週間後・1か月後に復習
- 解けなかった問題をリスト化:間違えた問題を「解き直しリスト」にし、定期的に復習
「勉強は復習が9割」と言われるように、学習内容を定着させるには「後工程=復習」が極めて重要です。
自分の勉強体力を可視化する「かんばん」
「かんばん方式」は、トヨタの生産管理で使われるシステムで、「どれだけの作業が進行中か」を一目で把握できるようにします。これを勉強に応用すると、自分の学習のどこにムリ・ムラ・ムダがあるのかを可視化して、改善をすることが容易になります。
具体的な実践方法
- 学習タスクをボードに可視化(付箋やデジタルツールを活用)
- 1タスクを1時間など共通の単位で統一する
- ボード上にあるタスクの数を記録し、キャパシティを可視化する
- キャパシティが上がった/上がらない要因を分析し、改善する
例えば、「数学の問題集をやる」ではなく、「数学の問題集を3ページ解く」といった管理方法にすると、自分のペースを把握・可視化しやすくなります。
問題をピンポイントで特定する「流し作業化」
③であげたカンバンを行うと、どうしてもとある段階にカンバンが溜まりすぎてしまいます。
こうなると、自分が上手く勉強をこなせていないことに焦り、最悪の場合自信を失ってしまうこともありますが、誰でもかならず直面するあるあるの出来事であり、むしろ勉強を大きく改善するチャンスです。
みなさんはどこかで「ボトルネック」という言葉を見聞きしたことはありますでしょうか?
図のような、道幅が狭くなっている部分がボトルネックであり、そうでない部分を改善する場合に比べて、この部分を改善することが工学的には重要であるとされています。
ボトルネックを解消することで、全体の流れが良くなり、学習の平均速度を大幅に向上することが期待できます。
カンバンが多くある部分は、問題である可能性が高く、そこに並んでいるタスクを眺めることで、自分の勉強法の何が悪いのかを気づくことができます。
具体的な実践方法
- カンバンが多い部分を特定する
- カンバンが多くなっている原因を特定する
- 原因に合わせた解決策を行う
問題は原因を特定することが非常に難しいですが、簡単に原因の種を可視化することができるようになることは非常に大きな効果をもたらします。
原因ではなく真因を発見する「なぜなぜ分析」
なぜなぜ分析、どこかで見聞きしたことはあるのではないでしょうか?
適切な形でなぜなぜ分析を5回ほど繰り返せば、たいていの問題は表層的な原因ではなく真因を突き止めることができます。
例
1.なぜ数学の勉強ができないのか→自信が無いから
2.なぜ自信が無いのか→数学が苦手だから
3.なぜ数学が苦手だと思うのか→問題が解けないから
4.なぜ問題が解けないのか→そもそもこの単元何をしているのか全く理解できていないから
5.なぜ単元を理解できないのか→数学の全体像や各単元の関係を知らないから
ただし、「なぜ数学の勉強ができないのか」と尋ねると、「自分の能力不足」・「~が悪い」といったようなそこで思考が止まる形となり兼ねません。あくまでも、システムや問題そのものを解決することを目指して、分析するようにしましょう。
具体的な実践方法
- 自責他責にせず、なぜを繰り返す
- カンバンが多くなっている原因に焦点を当てる
- 5回という回数には縛られず、納得できる段階まで行う
繰り返しにはなりますが、なぜなぜ分析は非常に難しい上に、場合によっては自分を追い込む可能性があるので、慎重に行いましょう。
まとめ
アップルやトヨタが実践する「ジャストインタイム」と「自働化」の考え方は、勉強管理にも応用できます。
- 必要が無い勉強は行わない(ニーズありきの思考)
- 復習を重視(後工程引取方式)
- 自分の勉強体力を可視化(かんばん)
- 問題をピンポイントで特定する(流し作業化)
- 原因ではなく真因を見つける(なぜなぜ分析)
これらを理解した上で実践することで、勉強の生産性を上げることができるでしょう。
ただし、これらの技法は一般的に学校などでは教えられることが無い管理方法ですし、個人で行うには非常に難易度が高いです。
COMPASSでは実際にIT企業にて製品の開発管理を行ってきたコーチが伴走し、躓きポイントを1つずつ解消しながら対応するため、スムーズにこの管理方法を取り入れることができます。
また、そもそもの「必要なもの」にあたる目標が重要になりますが、認知科学や組織科学に沿ったコーチングを提供することで、より成果に繋がる目標をたてることができます。
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