関税って何?目的・歴史と受験への活用方法について解説

1. 関税とは

関税とは、外国から輸入される商品に課される税金のことです。たとえば、海外からお菓子を輸入する場合、政府がそのお菓子に税金をかけることがあります。この税金を「関税」といいます。

関税をかける目的

関税には、いくつかの目的があります。

  • 国内産業の保護:海外から安い商品が入ってくると、国内の工場やお店が困ってしまうことがあります。関税をかけることで、国内の産業を守ります。
  • 税収の確保:関税は国の収入のひとつです。国はこのお金を使って道路を作ったり、教育に使ったりします。
  • 貿易の調整:海外からの輸入が多すぎると、国内のお金が減ってしまうことがあります。関税を使ってバランスを取ります。
  • 外交手段:関税を上げたり下げたりすることで、国同士の関係を調整することもあります。

関税の種類

関税には主に次の3種類があります。

  • 従価税(アドバロレム税):商品価格に対して一定の割合を税金としてかける。(例:価格の10%を税金として払う)
  • 従量税:商品の数量や重さに応じて税金をかける。(例:1kgあたり100円の税金)
  • 混合税:従価税と従量税を組み合わせたもの。

関税と分業・比較生産費説

関税を考える上では、大前提として「分業」と「比較生産費説」という経済の考え方を知っておくと役立ちます。

分業とは?

分業とは、それぞれの国や人が得意なことに集中して仕事を分けることです。

例えば、

  • Aさんはパンを作るのが得意
  • Bさんは服を作るのが得意

だったら、Aさんがパンを作り、Bさんが服を作って、お互いに交換すれば効率的ですよね?
これを国レベルで考えるのが「分業」の考え方です。

比較生産費説(アダム・スミスと自由貿易)

「比較生産費説」は、経済学者のデヴィッド・リカードが提唱した考え方で、アダム・スミスの「分業」・「自由貿易」の考え方を発展させたものです。

例えば、日本とアメリカが「米」と「車」を作るとします。

  • 日本は「米」を作るのが得意で、少ない労力でたくさん作れる。
  • アメリカは「車」を作るのが得意。

この場合、日本は「米」を作ってアメリカに売り、アメリカは「車」を作って日本に売るほうが、どちらの国も得をします。これが「比較生産費説」の考え方で、貿易を自由に行う(自由貿易)のメリットになります。

しかし、もし日本が「海外の車がたくさん入ってくると困る」と考えて高い関税をかけると、日本の車産業は守れますが、消費者は高い車を買うことになってしまいます。このように、関税にはメリットとデメリットがあるのです。

2. 世界の関税の歴史

関税は古代から存在し、国家の財源確保や貿易管理の手段として利用されてきました。

  • 古代~中世
    • 地中海貿易では、都市国家が通行税や関税を課していた。
    • シルクロード沿いの国々も関税を課し、貿易をコントロールしていた。
  • 近世~近代(17世紀~19世紀)
    • 重商主義(17世紀):フランスやイギリスは輸出を奨励し、輸入に高関税をかけた。
    • 自由貿易の台頭(19世紀):イギリスは1846年に「穀物法」を廃止し、自由貿易政策を推進。
    • アメリカ独立戦争(1775-1783年):イギリスの関税政策に反発し、独立の一因となる。
    • 関税同盟(1834年):ドイツの統一に向けた経済的基盤としてプロイセンが主導。
  • 20世紀以降
    • 大恐慌(1929年)と関税戦争:アメリカの「スムート・ホーリー関税法」(1930年)が世界貿易の縮小を招く。
    • GATT(1947年)→WTO(1995年):関税を引き下げ、貿易自由化を促進する国際ルールが整備。
    • 近年の動向:TPP(環太平洋パートナーシップ協定)やRCEP(地域的包括的経済連携)など、多国間協定による貿易自由化が進む。

3. 日本の関税の歴史

日本では、関税は江戸時代から始まりました。江戸時代、貿易を管理するために「幕府税」として関税が課されました。明治時代には、西洋の影響を受けて、国際的な貿易をスムーズに行うための関税制度が整備されました。

  • 江戸時代以前
    • 鎖国政策のもと、長崎などの限られた港でのみ貿易が行われ、関税が設定。
  • 開国と関税自主権の喪失(1858年)
    • 「日米修好通商条約」により、日本は関税自主権を喪失し、輸入品に自由な関税を設定できなくなる。
  • 関税自主権の回復(1894年~1911年)
    • 1894年の日英通商航海条約で関税自主権の一部回復。
    • 1911年、小村寿太郎の交渉により関税自主権を完全回復。
  • 戦後の関税政策(1950年代~)
    • 1955年:GATTに加盟し、関税引き下げへ。
    • 1995年:WTO発足に伴い、自由貿易のルールに適応。
    • 近年ではEPA(経済連携協定)やFTA(自由貿易協定)を活用し、貿易の自由化を進める一方で、農業などの保護政策も継続。

4. 受験対策としての関税

関税は、日本史・世界史・政治経済(政経)などで頻出のテーマです。

  • 日本史
    • 「関税自主権の回復」の流れを理解。
    • 開国と不平等条約の影響を整理。
  • 世界史
    • 重商主義と自由貿易の流れを押さえる。
    • 関税政策が戦争や経済危機に与えた影響を整理。
    • 近代ドイツの関税同盟の意義を考察。
  • 政治・経済
    • WTO、FTA(自由貿易協定)、EPA(経済連携協定)の違いを理解。
    • 保護貿易と自由貿易のメリット・デメリットを比較。
    • 現在の貿易摩擦(米中貿易戦争など)にも触れる。

5. 関税の考え方を受験に活かす

関税の概念は、受験勉強にも応用できます。

その際に重要となるのは、苦手なことは他国に任せて、得意なことを「関税」を使ってガンガン伸ばそうとしているという考え方です。

関税の目的受験勉強への応用
国内産業の保護得意科目を伸ばし、苦手科目は最低限の対策
貿易赤字の是正不要な情報をカットし、必要な知識を効率的に学習
戦略的関税合格に必要な科目に重点を置いて勉強

例えば、

  • 参考書を増やしすぎず、必要なものだけに絞る。
  • 自分の得意科目を活かし、配点の高い部分を重点的に勉強。
  • 苦手科目は「関税」をかけるイメージで、最低限の対策で効率よく学ぶ。
  • 模試の結果を分析し、どこに「関税」をかけるべきか判断する。

といったことで、関税にかけるかを考えてみると、得意なことをさらに伸ばしやすくなります。

6. 関税で学ぶ英単語

関税に関連する英単語を学ぶことで、英語の試験や時事問題対策にも役立ちます。

  • Tariff(関税)
  • Import duty(輸入税)
  • Customs(税関)
  • Protectionism(保護貿易主義)
  • Free trade(自由貿易)
  • Trade barrier(貿易障壁)
  • Quota(輸入割当)
  • Embargo(輸出入禁止)
  • Subsidy(補助金)

これらの単語を知っておくと、英語の長文読解や小論文対策にも役立ちます。