「本当にそれ、自分で決めたの?」――受験勉強とアンコンシャス・バイアス理論


はじめに:「なんとなく」の正体に気づく

「理系のほうが就職が良さそうだから、とりあえず理系で」
「女の子で数学が得意って珍しいよね」
「勉強が苦手なタイプだから、志望校は少し下げようかな…」

そんな「なんとなくの判断」を、あなたは日々の選択でしていませんか?

実はこうした“なんとなくの感覚”の裏側には、「アンコンシャス・バイアス(無意識の偏見)」が隠れていることがあります。

この記事では、「アンコンシャス・バイアスとは何か?」という基本から、それが受験生活にどう影響し、自分の可能性をどう狭めてしまうのか、さらにそのバイアスとどう向き合い、乗り越えていけばいいのかまで、丁寧に解説していきます。


アンコンシャス・バイアスとは?

定義

アンコンシャス・バイアス(Unconscious Bias)とは、無意識のうちに持っている思い込みや偏見のことを指します。

これは、自分では意識していないにもかかわらず、判断・態度・選択に影響を与えているバイアス(偏り)です。

たとえば:

  • 「文系は論理的思考が弱い」
  • 「推薦組は勉強ができない」
  • 「〇〇高校の子は頭がいいに決まってる」
  • 「自分には〇〇大学なんて無理」

こういった“思い込み”は、しばしば事実に基づかず、しかも私たちの行動を制限してしまいます。


なぜ人はアンコンシャス・バイアスを持つのか?

人間の脳は、日々膨大な情報を処理しています。その中で、すべての情報を一つ一つ考えて判断するのは不可能です。

そこで脳は、省エネモードで判断するために「過去の経験」「周囲の意見」「文化的背景」などをもとに、**“自動化された思考パターン”**を作ります。これがバイアスの正体です。

つまり:

  • 情報の整理術としては合理的だが、
  • 個人の判断を歪める危険もある。

受験生にとってのバイアスの罠

受験生は、日々選択の連続です。
進路、勉強方法、参考書、志望校、生活スタイル、人間関係……

ここに、アンコンシャス・バイアスが潜んでいると、知らぬ間に選択肢を狭めたり、自己評価を下げたりしてしまいます。


受験生活における具体的なバイアス例

バイアスの種類問題点
性別バイアス「男子は理系、女子は文系」得意不得意ではなく、性別で進路を決める危険
出身校バイアス「うちの高校は〇〇大に受からない」個人の可能性を学校名で制限
自己効力感バイアス「中学時代に苦手だったから英語は無理」今の自分の力に目を向けられなくなる
成功体験バイアス「前回はこの参考書でうまくいったから」過去にこだわり、柔軟性を失う
比較バイアス「あの子より下だから、自分はダメだ」他人軸の評価で自己否定に陥る

バイアスがもたらす3つの弊害

自己評価を歪める

本来の能力とは関係なく、「自分はダメだ」「無理だ」と思い込む。

選択の幅を狭める

可能性のある選択肢を「なんとなく」で排除してしまう。

モチベーションを下げる

無意識に「無理」と思い込むことで、行動量そのものが減る。


どうすれば、アンコンシャス・バイアスに気づけるのか?

ステップ①:言葉にしてみる

自分が「当然」「当たり前」と思っていることを、ノートやスマホで書き出してみましょう。

例:

  • 「偏差値60以上の人だけが〇〇大に行ける」
  • 「数学が苦手な自分は、理系に行くべきではない」

書き出すことで、「え、それって本当に根拠あるの?」と自分にツッコミを入れることができます。


ステップ②:異なる視点で問い直す

  • 「もし自分の親友がこの選択をしようとしていたら、同じアドバイスをするか?」
  • 「これは“本当に”自分が選びたい進路か?」

「第三者視点」や「未来の自分視点」を持つことが、バイアスに気づくきっかけになります。


ステップ③:統計やファクトに目を向ける

「〇〇高校からでも〇〇大学に合格した例がある」
「数学苦手でも医学部に受かった人もいる」

バイアスの多くは“感覚”に基づいています。
ファクト(事実)で覆しましょう。


バイアスと戦うのではなく、“共存”する

バイアスは、人間が持っていて当たり前のものです。

完全に排除することはできません。
大事なのは「気づくこと」、そして「それに支配されないこと」。

例えば:

「自分には無理かもしれない」と思ったとき、
「これは“根拠のない思い込み”かもしれない」と疑ってみること。

たったそれだけで、可能性は大きく変わります。


バイアスを乗り越えた先輩たちの例

Aさん:推薦組への偏見を乗り越えた

推薦組=勉強が苦手、というバイアスがあったが、実際には自分に合った勉強スタイルで学力が伸び、国立大学へ。

Bさん:「数学が苦手」の思い込みを捨てた

中学時代の「3」を引きずっていたが、1からやり直し、自分のペースで取り組むことで「できる感覚」を取り戻した。

Cさん:「自分には無理」という思い込みに気づいた

模試の結果に左右されていたが、日々の成長を意識するようにして、最終的に第一志望に合格。


バイアスを味方につける考え方

  • 「バイアスに気づけた自分」は、すでに1歩進んでいる。
  • 「今の判断は、本当に自分の意思か?」と問い直せる力は、一生モノ。
  • バイアスを否定するのではなく、使いこなす視点を持とう。

まとめ:あなたの“本当の選択”を生きるために

受験勉強とは、「知識や技術」だけでなく、「自分の選択」を重ねていく過程です。

アンコンシャス・バイアスは、あなたのその選択に、知らぬ間にブレーキをかけているかもしれません。

だからこそ、こう問い直してみてください。

「これは本当に、自分が選んだ道か?」

その問いに「YES」と言える人が、最終的にもっとも後悔の少ない受験を送れるはずです。