「やる気が出ない」の正体とは?──期待理論から学ぶ受験生のモチベーション管理

目次
はじめに:なぜ勉強にやる気が出ないのか?
「やらなきゃいけないのは分かってるのに、なぜか手が進まない」
そんなふうに感じたことはありませんか?
受験勉強に限らず、私たちは「やらなきゃいけない」と思っているのに行動できないことがあります。この“やる気の空回り”の原因を心理学的に説明できるのが、**期待理論(VroomのVIE理論)**です。
この記事では、この期待理論をベースに、
- なぜやる気が出ないのか
- どうすれば本当のモチベーションが生まれるのか
- 自分の勉強にどう応用できるか
を丁寧に解説します。
期待理論とは?──やる気を「3つの掛け算」でとらえる考え方
期待理論(Expectancy Theory)は、1964年にヴィクター・ブルーム(Victor Vroom)によって提唱された動機づけ理論です。
この理論では、人が「やる気を出すかどうか」は以下の3つの要素の掛け算で決まるとされています。
① 期待(Expectancy):
「この努力で成果が出せる」と思えるかどうか
👉 例:この参考書を1冊終えれば模試の点が上がると思えるか
② 道具性(Instrumentality):
「成果が得られれば、望む報酬が得られる」と思えるかどうか
👉 例:模試で良い点を取れば志望校に合格しやすくなると思えるか
③ 価値(Valence):
「その報酬に魅力を感じているかどうか」
👉 例:志望校に合格することに心から価値を感じているか
この3つの要素は掛け算でモチベーションに影響します。 モチベーション=期待×道具性×価値\text{モチベーション} = 期待 × 道具性 × 価値モチベーション=期待×道具性×価値
つまり、どれか1つでもゼロに近づくと、モチベーションは限りなくゼロに近づきます。
受験生の「やる気が出ない」具体的パターン
期待理論をベースに、受験生のモチベーション低下パターンを3つに分類してみましょう。
パターン1:努力すれば成果が出ると思えていない(期待が低い)
- 「勉強してもどうせ点は上がらない」
- 「何から手をつけていいかわからない」
- 「過去に努力しても結果が出なかった」
このような状態では「やる意味」を感じづらくなり、モチベーションは下がります。
パターン2:成果が出ても報われないと感じている(道具性が低い)
- 「模試の点が上がっても合格に直結しない」
- 「どうせ推薦が取れなければ意味がない」
- 「自分の学校からはあの大学に受かる人はいない」
成果と報酬がつながっていないと感じると、「努力しても無意味」と思ってしまいます。
パターン3:そもそも報酬(合格)に価値を感じていない(価値が低い)
- 「親に言われて志望校を決めただけ」
- 「合格しても、何がしたいか分からない」
- 「大学って行く意味あるのかな」
報酬そのものに魅力を感じていないと、「がんばろう」とは思えません。
モチベーションを高めるための処方箋:3要素別アプローチ
① 期待を高める:努力の意味を見える化する
- 小さな成果を積み重ねる:1日単位で「できたことリスト」を記録する
- 成果が出た経験を振り返る:「何をやったらどう変わったか」を書き出す
- 成果を見える形でフィードバック:「点数の伸び」や「問題の正答率」をグラフ化
👉 ポイント:自分が変化している実感を得ることが、期待を生みます。
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このできる感はまさに「自己効力感」と呼ばれる概念と結びついています。
② 道具性を高める:努力と報酬のつながりを強化する
- 合格の先にある未来を具体的に描く:「大学生活でやりたいこと」を書いてみる
- 過去の合格者のストーリーを読む:「この模試でA判定を取ったら合格した」など
- 成績基準と合否の相関データをチェック:「偏差値◯なら合格率◯%」と可視化
👉 ポイント:**成果が報酬につながる「根拠」や「ロジック」**を自分なりに把握しましょう。
③ 価値を高める:自分自身の「意味」を問う
- なぜその大学・学部に行きたいのか?を言語化する
- 将来の夢や目標から逆算して考える:「この進路はなぜ必要?」
- 「他人の期待」ではなく「自分の願い」から選び直す
👉 ポイント:価値は他人が与えるものではなく、自分で感じ取るものです。
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意味を問うには、「目的」の設定が重要であり、「目標」とは明確に区別する必要があります。
期待理論×学習の実践チェックリスト
要素 | チェックポイント | 対策例 |
---|---|---|
期待 | 「この努力は報われそう」と感じているか? | 進捗の可視化・成功体験の積み重ね |
道具性 | 「成果が報酬につながる」と信じているか? | 合格事例・合否基準の確認 |
価値 | 「合格に心から価値を感じているか?」 | 自分の動機の深掘り |
AI用期待理論実践プロンプト
以下のプロンプトをコピペしてAIと会話をしてみてください。
現状を分析したい場合
実践用プロンプト:
私は今、ある目標に向けてやる気が続かず困っています。 心理学の「期待理論」(Expectancy Theory)に基づいて、以下の3つの観点から私の現状を一緒に個別具体的に分析してください。
1. 期待(Expectancy):努力すれば成果が出ると思えるか?
2. 道具性(Instrumentality):成果が報酬につながると信じられるか?
3. 価値(Valence):その報酬に魅力を感じるか?
まず、以下の情報をもとに質問を始めてください。
【現状】 私は「○○」という目標を立てています。 ただし、最近あまりやる気が出ず、手が止まりがちです。
→ 期待理論の3要素に沿って、私にヒアリングしながら課題を明確にし、改善の方向性を提案してください。
目標を立てたい場合
実践用プロンプト:
あなたはモチベーション設計に詳しいコーチです。 私は今、新しい目標を立てたいのですが、やる気が続く形で設計したいと思っています。
心理学の「期待理論」(Expectancy Theory)に基づいて、以下3点を押さえた目標設計のガイドをお願いします。
- 1. 成果と努力の関係が明確で、自分が「できそう」と思えるか(Expectancy)
- 2. 成果が得られたとき、確実に意味のある報酬が得られるか(Instrumentality)
- 3. その報酬が自分にとって本当に魅力的か(Valence)
まずは私にいくつか質問をして、それをもとに 「期待×道具性×価値」がそろった目標設定を一緒に作ってください。
(目標はまだ漠然としていても大丈夫です。質問から始めてください)
モチベーションは「気合い」ではなく「構造」
多くの人が、モチベーションを「気合い」や「根性」としてとらえがちですが、期待理論が教えてくれるのは、それが**仕組み(構造)**であるということです。
やる気は「ある/ない」ではなく、「高まる/下がる」もの。
その背後にある要素を1つずつ見直していけば、意図的にモチベーションを高めることが可能になります。
おわりに:自分の「やる気の構造」を言語化しよう
この記事では、期待理論というフレームを使って、受験勉強におけるやる気のメカニズムを解説しました。
「やる気が出ない」ことに罪悪感を抱く必要はありません。
大切なのは、「なぜそうなっているのか」を知り、自分なりの打ち手を見つけることです。
あなたが本気でやる気を高めたいときは、「期待・道具性・価値」の3つを1つずつチェックしてみてください。